2023年全国学力調査の結果から

4年ぶりの学力テスト

 2023年4月18日、文部科学省は4年ぶり2回目となる全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)を実施し、その結果を7月31日に公表しました。
 全国学力テストでは小学6年生と中学3年生を対象に、国語、算数・数学、英語(中学校のみ)の教科に関する調査と、学習環境に関するアンケート形式の質問紙調査が実施されました。
 調査結果によると、教科に関する調査の全国の平均正答率は、小学校の国語が67.4%(前年度65.8%)、算数が62.7%(前年度63.3%)。中学校の国語が70.1%(前年度69.3%)、数学が51.4%(前年度52.0%)。小学校・中学校ともに国語が前回より上昇し、算数・数学が下降しています。

英語の結果

 中学校で4年ぶり2回目となった英語(聞く・読む・書く技能の合計を集計)の平均正答率は46.1%で、前回実施した2019年度の56.5%と比較すると、10.4ポイント低下しました。4技能別にみると、「聞く」58.9%と「読む」51.7%は50%を超えていますが、「書く」は24.1%、「話す」は最も低い12.4%となり、「書く・話す」により課題があることが浮き彫りとなりました。
 中でも「話す」では、1問も解けない生徒が6割を超えており、作問した国立教育政策研究所の責任者は「聞いたことを基に考えと理由を述べる力を測る狙いだったが、場面設定が複雑になりすぎ、生徒には難しかったようだ」と述べています。さらに、「話す」の大問2(環境問題に関して英語のプレゼンテーションを聞いて自分の意見を説明する問題)は正答率が4.2%となっていて、文科省は問題の難易度が高かったと認めつつ、「社会的な話題について聞き、自分の考えやその理由を話すことに課題がある」「授業で即興のやり取りやスピーチなどを継続的に行うことが重要」としています。

「話す」問題の難しさ

 今回、「話す」問題では生徒の過半数が「時間が足りなかった」と答えたといいます。大問1(留学生と動物園を訪れた設定で話しかけられる問題)は英語で7~20秒での返答を求められます。タブレット上には画像が表示されており、答えるべき内容は比較的はっきりと示されているので、あとはそれを英語に直して発音すればいいのですが、それでも難しかったようです。ただ、問題はそこではありません。相手の留学生から話しかけられる英文が表示されていないのです。生徒は質問文を自分の耳で聴きとらなければいけません。もしかすると「話す」ことはできるのに、質問を聞き取ることができずに不正解になってしまった生徒もいるかもしれません。リスニング能力を問うための「聞く」問題はこれとは別にあるので、このような問題形式が適当なのか疑問です。
 正答率が4.2%だった大問2(環境保護が題材の動画を見る問題)も英文が表示されていない点は同じです。ただこちらの問題では、「スーパーなどでビニール袋を購入するか、マイバッグを使用するか」というテーマが展開されていて、最終的に「環境保護の観点から、ニュージーランドではビニール袋の販売自体がない。日本でもそのようにすべきではないか」という問題提起に対して、自分の考えを1分で整理し、30秒で英語で話すことが求められます。この問題の正答率が4.2%だったのは、英語を「話す」ことができないというより、そもそもテーマ自体が難しくて自分の考えがまとまらない、という理由もあるのではないでしょうか。
 つまり、今回のテストでは、リスニングの力や社会問題への関心、弁論能力など、英語を「話す」こと以外の要素が多分に含まれていたことが低い成績の原因のひとつではないかと考えられます。

都立高校入試のスピーキングテスト

 このように様々な問題点を孕んだ「話す」テストですが、文句を言ってばかりもいられません。なぜなら、都立高校入試の英語では昨年度からスピーキングテスト(ESAT-J)が実施されているからです。こちらのテストも、タブレットを使用して問題に答えて英語を録音するという形式です。そして残念なことに、最初の数問(表示された英文を読み上げる問題)を除いて、英文が表示されないという点も同じです。最後が自分の考えをまとめて述べる問題(例えば学校給食のメニューは全員同じであるべきか、など)になっているところも似ています。
 塾では事前に何度か問題を体験させ、取り組み方や勉強法などを指導しています。都立高校を受験する人はもちろん、そうでない人にとっても今後の英語で必要となるスキルですので、頑張って練習しましょう。